事業承継において持株会社という選択肢には多くのメリットがある一方で、構築や運用にあたっては慎重な判断が求められます。制度の複雑さや法的な縛り、経営の実態との乖離など、リスクに対する理解が不十分なまま導入すると、期待した効果を得られない可能性もあるため、事前に十分な検討が必要です。
ガバナンス不全に陥るリスク
持株会社は親会社として複数の子会社を管理する役割を持ちますが、実際には機能が形骸化してしまうこともあります。経営判断が分散しすぎると、意思決定のスピードが落ちるほか、親会社の経営陣と子会社の現場が対立する可能性もあります。特に事業承継を目的として持株会社を設立した場合、後継者の経営判断が親会社に偏ると現場との連携に支障をきたします。
事業と資産の分離による誤解
持株会社化によって、事業会社と資産保有の役割が分離されるため、関係者がその構造を正確に理解していないと誤解やトラブルを引き起こすことがあります。たとえば、資産が持株会社に集約されることで、従来の事業会社における資金運用が制限されたり、取引先との信頼関係に影響を及ぼしたりすることがあります。事業承継のスムーズな実現を妨げる要因にもなり得るため、透明性のある構成が求められます。
制度変更に対応する体制の必要性
税制や会社法の改正により、持株会社を取り巻く環境は年々変化しています。事業承継の計画を長期的に進めるうえでは、これらの制度変更に対して柔軟に対応できる体制を構築することが欠かせません。制度の改正に適切に対応できなければ、想定していた効果が薄れたり、新たな課税リスクが発生する恐れがあります。