
経営者が次世代に事業を託すとき、「直接の株式譲渡」だけではなく「持株会社(ホールディングス)を活用した方法」が注目されています。事業承継に持株会社を活用することで、経営権の集中や税務対策、グループ経営の円滑化といったメリットを得られます。
ただし、メリットだけでなく制度要件や運営コスト、設立時の手続きなど注意すべき点もあります。このページでは、持株会社を活用した事業承継の基礎を整理し、成功に向けた視点をお伝えします。
持株会社を活用した事業承継の主なメリット
事業承継に持株会社を活用する最大のメリットは、会社の株式を直接移転するのではなく、まず持株会社を設立してその子会社として既存事業会社を組み入れる仕組みを作る点にあります。
これにより経営の意思決定が集約され、経営権の安定が図れます。さらに、親会社(持株会社)を通じて複数の子会社を管理することで、グループ戦略を統一しやすくなるメリットもあります。加えて、税制優遇を活用できる場合があり、相続・贈与対策としての活用価値も高いです。
制度上の注意点と持株会社設立時のハードル
一方、持株会社を活用した事業承継には注意すべき事項もあります。制度優遇を受けるためには税務上の適格要件を満たす必要があり、設立や運営において細かい条件が設けられています。
例えば、持株会社が純粋持株会社であること、一定の子会社保有率を満たしていること、支配関係の明確化などが要件となる場合があります。また、複数の法人を運営することによる管理コストの増加や、グループ内の役割・責任の再構築が必要となるケースも少なくありません。
活用時に押さえるべき流れと実務ポイント
事業承継に持株会社を活用する場合、まずは目的と譲渡対象会社の整理から始めます。次に、持株会社を設立し、既存の事業会社の株式を持株会社に移す方法を検討します。その後、後継者に持株会社の株式を譲渡するかたちで経営承継を完了させます。
実務的には株式評価、贈与・譲渡契約の設計、税務申告、法人の設立・変更登記といった手続きが関わってきます。専門家と連携しながら、時間とコストを見据えてスケジュールを立てることが成功の鍵です。